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代表取締役社長
井上英隆 氏
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マツムロの眼
つくり手と消費者、かかわる人全員が幸せであること。
パルの経営理念は「みんなの幸せのために」というものだ。漠然としているようにも思えるが、この理念には命が懸かっている。実は、社長の井上は16年前に頚椎軟骨症という大病を患っている。手術をしなければならず、それまでの2週間は悪いほうへ悪いほうへと物事を考えていったという。
医者に手術の成功の確率を尋ねると、「飛行機が落ちるくらいの確率」と答える。それでは安心できず「でも最近、飛行機はよく落ちるでしょう」と医者に返すと、医者も「そうやな」と言う。
漫才のようだが、そこで、井上は俺の人生は何だったのかと自らに問い直した。そこで考えついたのが冒頭の経営理念なのだ。「それから会社が変わりました」と言う井上の笑顔がさわやかだった。 |
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ヤング層の購買意欲はデフレ不況下でもさほど減退しなかったとはいえ、この会社のどこに成長の源泉があったのか。社長の井上英隆は事もなげに答えた。
「この成長に寄与したのは、システムです。ヤングのファッションは流れが速い。この流れを敏感に感じ取って商品化していくシステムがあればいい」
それはそうだが、それができないから苦労するのだ。“言うはやすく行なうは難し”である。しかし、井上はこう続けた。
「お客さんと同世代で、感性の優れた人間に提案させる。『拝啓社長殿』という提案制度があって、社員はもちろんアルバイトやパートでも提案できる。今からはやるモノをいま提案しても遅い。次はこれだ!というモノを提案の中からピックアップし、提案者にマーチャンダイザーをつけて商品開発をしていく」
実際、アルバイトが提案した、あるブランドは一時期、同社の売り上げの半分を占めたほどだ。
おもしろいヤツを面接で見つける。
こうしたシステムの下、毎年50〜60の提案があり、その中から、3つか4つを選ぶ。社長が見てゼネマーチャンダイザー(GM)が見て、事業部長に担当させていく。
「もともと後発だったので、トレンディーでないと伸びていかない」(井上)から、とった方策なのだそうだ。
しかし、ここでもうひとつ重要な点に気づく。では、そんな感性の優れた人をどうやって採用するのか、である。
同社の採用はきわめてユニークだ。毎年、ネットで6500人もの応募がある。来るのは4500人程度。出身校も成績も関係ない。書類審査もなし。来た人はすべて面接する。採用基準はただひとつ、「おもろいヤツ」かどうかだ。だからリクルートスーツで来た人間など、もちろんダメ。1次面接が大変だ。東京で2回、大阪で3回。1人当たり5分程度。ここではむしろ面接官の感性が試される。社長も参加して人物をじっくり見ていくのは3次、4次の面接からだ。
ファッションは12年でひとサイクルだ。
実は、同社のこのシステムを支えるもうひとつの理論が「パルマップ」である。
井上が20年前に考えた、ファッションは12年サイクル説に基づくファッションマップとでも言おうか。井上は戦後の220〜230ものブランドを1つの表に時系列に置いていき、そのライフサイクルを検証した。
「コンサバがはやると次にはエレガントへと流れ、ユニセックスへと移行し、ドレスダウンヘと向かう。それがだいたい12年のサイクルで一巡してくるのがわかった」(井上)という。社長自らの発見で、同社の商品戦略は加速した。
「ただ、重要なのはそれがスパイラルで進んでいることです。ひと時代前のコンサバと次のコンサバでは微妙に違う、そこが重要」(井上)。だからこそ、そこに感性が必要になってくる。つまり前述の提案制度が生きてくるということなのだろう。この2つが組み合わさって、同社のシステムは成り立っているというわけだ。
このシステムを語るには、もうひとつ重要なポイントがある。それは、こうしたシステムの下では自社で商品の企画開発から製造・販売までを一貫して行なっていく場合に最大の強みを発揮する、ということだ。ファッション業界ではこの企画・製造・販売を一貫して行なうことをSPAと呼んでいる。同社がこれに取り組み始めたのは15年前。しかし本格的に始めたのは1997年からである。
ジャスダック上場時はSPA化率35%程度だったのが、現在は70%になっている。
「すべて仕入れて売るだけの小売りのときは粗利益率42〜43%で経費が38〜39%だった」(井上)というから経常利益率は4〜5%。だが、現在は10%を超えている。
現在、実行中の3カ年中期計画では、「再来年には売り上げ700億円。その後、第2次3カ年計画を達成すると売り上げ1000億円で経常利益130億円」(井上)となる。そのための課題は1つ。販路の多様化である。同社は直営で店舗展開を行なっているが、現在は大都市圏中心。
「これを30万〜50万都市にも広げたい。百貨店にも入れるし、そのときには量販系のファッションもつくっていかなければ」との思いが井上にはある。
実現すれば、名実ともに業界の一翼を担う存在となる。
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